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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
Read 春泥・三の酉 (しゅんでい) by 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 86,075 characters · 173 screens
――つまり、インテリだったんだナ、いまでいえば……
――そうなのよ。……だって、一度か二度、浅草の区会議員になったことさえあるんですもの。
――すしやのむすめでなくって、区会議員の娘か?
――その娘がどうでしょう、十五の春から四十台の今日が日まで、三十年、ずッと芸妓をして来てしまったんですものね。……あきれるわ。こうと知ったら、あのとき、花園池で、親たちと一しょに死ぬんだったわ。……そのほうがよかったわ……
――必ずしも、そうもいえないだろう? ……生きていてよかったと思ったことだってあったろう?
――それァね、長い三十年のあいだですもの、二度や三度あったわ。……でも、いまになってみれば、夢よ、みんな。……水に映った月みたようなものよ……
――そういったら、しかし、だれだってそうだ。……人間の一生なんてものは、はじめッから、そういう風にしくんであるんだ……
――ところが、世間には、そうでない人もいるから口惜しいのよ。……いまいった年ちゃんッて人ね?
――うん。
――この人なんか、しみ/″\、生きてゝよかった人よ。……あのとき、死なゝかったばかりに……助かったからこそ、いまのような幸せな月日に逢えたんだわ……