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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
なぜならば。
英時は、北条一族の赤橋守時の実弟だった。
その守時は、いうまでもなく、尊氏の妻、登子の兄でもある。――で、尊氏にとれば、前の九州探題英時は他人でない。妻の兄だ。この九州と尊氏との宿縁もまた、浅くはない。
「いつかは、この九州へ、お手をかける日もあるにちがいない」
少弐妙恵などは、夙に、こうした洞察をもっていた。大友、島津らの党も、ひそかに宮方から離れていた。
大友具簡の一子貞載が、中央にあって、箱根竹ノ下で寝返り、義貞を離れて尊氏の手へついてから、九州でもふたたび、宮方と足利方とは、真二つに割れ、ここは大揺れに揺れ返していた。――尊氏の九州下りは、じつにそんな時であったのである。
亡き菊池寂阿(武時)には、たくさんな子があり、元弘の博多合戦で、父寂阿と共に討死したのもあるが、みな父の遺志をついで、後醍醐の召に応じ、中央へ出て二心なき戦功をあげている。
――で、建武初頭の論功のさいには、
嫡男の菊池武重を、肥後の守護職、兼、左京大夫に。
四男武茂は、対馬守に。
その弟武澄は肥前守。
また、末弟の武敏は掃部助に。
というふうに、一族みな任官、受賞の栄に浴した。