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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
「ヘエ――」
「職人の勝蔵さ、隣へ引越して来た踊りの師匠を張り合って、主人の息子を殺したんだ」
源吉はだいぶ好い心持そうです。
「本人は口を割ったろうか」
「知らぬ存ぜぬだ、いずれは少し痛めなきゃアなるまい」
「証拠は?」
「何にもねえ――と言いたいところだが、ありすぎて困っているんだ。刃物は勝蔵の使っている畳庖丁だ、――もっとも本人は井戸端へ忘れて置いたっていうが、良い職人が道具を井戸端へ忘れるはずはねえ、それに、昨夜駒次郎が外へ出たがるのを、ひどく気にしていたそうだ」
源吉のいう証拠はあまりに通り一遍のものです。
「駒次郎を怨む者は、まだ外にもあるはずだ。怨みだけで言えば、町内の若い者が半分ほどは下手人の疑いがある。それから、大きい声じゃいえないが、娘を捨てられて怒っている浪人者もいるぜ」
「大里玄十郎か」
「まアね」
「そんな事を言ったって、勝蔵が下手人でないとは決らないぜ、俺はともかく八丁堀へ行って来る。町内の若い者なり、浪人なりを縛るがよかろうよ」
朱房の源吉は、いや味を言いながら行ってしまいました。
町内の若い者、半分は下手人の疑い――と聞いて怯えたのか、路地を埋めた野次馬は、一人去り二人帰り、間もなくだいぶ消えてしまいます。