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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
「親分に言い付けられて、すぐ裏から廻ると、向うの荒物屋の角に立って、そっとこちらを見張っている女があるじゃありませんか」
「外には誰も居なかったのか」
「犬っころ一匹居ねえ、御町内はまことに太平さ」
「無駄を言うな」
「側へ寄って首実験をしようと思ったが、どうしても面を見せねえ、後ろから覗くようにすると、いきなり筋違見附の方へスタスタと駆け出すじゃありませんか」
「…………」
「五六町追っかけたが、女のくせに恐ろしく足が早え、――それに御守殿崩しの襟脚がめっぽう綺麗だ」
「何? 御守殿崩し?」
「まさか椎茸髱じゃねえが、間違いもなく武家の内儀だ。年は二十五六、――もう少し若いかな」
「それがどうした」
「だんだん人足は多くなるし、見附を越して駕籠にでも乗られるとうるせえ、後ろから追いついて、いきなり姐さんちょいと待って貰おうか――と袖を引くと振り向きもせずにあっしの手を払った」
「フーム」
「癪にさわるから、御用ッと首筋へ武者振り付くと身をかわしてデンと来やがった。それで顔も見せねえんだから凄い腕前だ」
「馬鹿野郎、女に溝へ投り込まれて感心する奴があるかい」
「天下の八五郎を溝へ投り込む女は、江戸広しといえどもたんとあるわけはねえ」