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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
ん。
「親分、母屋へ行きましょう」
ガラッ八は、平次の落着き払った様子が不思議でならなかったのです。
「まア急くな、――ところで、二人のうち綱渡りの出来るのはいないだろうな」
「冗談で、親分」
「冗談じゃないよ、綱を張って渡る工夫が出来れば、向うの窓へ楽に行ける」
平次は日本一の真顔でした。
「あっしは猟師の真似をしたこともありますから、鉄砲なら撃てますが、綱渡りなんて芸はありません、――吉三郎は魚取りの方で、相模湾で波の上は渡ったでしょうが、これも綱を渡った話は聞きませんよ」
仁助は少し向っ腹を立てた様子です。
「獣や魚を相手に暮したら、刃物を投ることもあるだろうな」
「そりゃありますとも」
「手槍とか、銛とかを――」
平次の調子は滑らかです。
「出刃庖丁は投りませんよ」
仁助は恐ろしくきかん気です。
「猪や鮪へ出刃庖丁を投った話は聞かないな、ハッハッハッ」
平次はカラカラと笑いました。
「手槍がありゃ投ってお目にかけますぜ、猪や熊だって一と突きだ、人間なんざ甘えもんで」
仁助がヌケヌケとそんな事を言うと、
「兄哥、余計なことは言わない方がいいぜ、俺だって、銛なら投るが」