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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens

Aozora Bunko

主人の勘兵衛がこんな事を言います。

「お店なんか大きな門松を建てるから、こんな時は不自由なわけで」

「ヘエ――」

「門松は誰が焼いているんです」

「お浜ですよ、女のくせに、妙な事に気が付いたもんで」

「あッ、それだッ」

平次は何に驚いたか、一足飛びに風呂場へ――。

「あ、親分さん」

サッと顔色を変えて立上がるお浜の手から、一と抱えの松と竹を奪い取りました。

「八、納屋へ行って吉三郎を縛れ」

「合点」

飛んで行く八五郎を尻目に、平次の片手は女を押え、片手を働かせて門松の束をほぐしました。

中から選り出したのは、枝のない竹が一本、長さ六尺ほど、尖端は泥に塗れて、黒ずんだ膠のように見えるのは、紛れもない血の古くなったものです。

「これだこれだ、どうして、こんな見え透いた事に気が付かなかったんだろう」

「親分、――吉三郎は逃げてしまいましたよ」

八五郎はこのとき空手でボンヤリ帰って来ました。

「薄情な野郎だ、女を捨てて行きやがって――」

*

お浜は危うく処刑されるのを、平次の情けで助けられました。吉三郎はそれっきり行方知れずになりましたが、間もなく平次の手で捕まって獄門台に登ったということです。