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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
「よしよし、塀の越しっぷりがいいと思って、悪い料簡を起すな」
「親分、冗談を言っちゃいけねえ」
「待て待て、今度はこの石を二つ持って越すんだ、抱えても背負っても構わねえ」
「こいつア無理だよ、親分」
「まア、やってみな、無事に越せたら石は手前にやる。家へ持って帰って、沢庵の重しにでもするがいい」
「からかっちゃいけねえ」
平次がこんな冗談を言ってる時は、一番真剣な事を百も承知のガラッ八は、素直に二つの石を背負って塀を越そうとしましたが、十貫目の荷物を背負っては、どう工夫してもこの塀を越せません。ガラッ八が危うくひっくり返りそうになるのを抱き止めて、
「よしよしもう沢山だ、とんだ骨を折らせた。サアこっちへ来るがいい」
引揚げると縁側から見ている赤井左門の前へ小腰を屈めました。
「殿様、千両箱はお屋敷から持出されちゃいません」
「何?」
左門は今さら眼を見張ります。
「三日経って返して来ないのも可怪しいが、――風太郎だって鬼神ではないでしょうから、あの塀を越すにはどうしても一度千両箱を下へ置くか、塀の上へ載せるか、向う側へ投り出すかしなければなりませんが、風太郎が越したろうと思う辺には、そんな跡は一つもありません。