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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens

Aozora Bunko

八五郎が大声でわめきながら、追い散らす人垣の中を、一と目、

「あッ」

平次は仰天しました。

燦として降りそそぐ五月の陽の下、土手の若草の上におっ転がされたのは、真っ白な美女の肉体、振り乱した髪をかき上げてやるまでもなく、死もまた奪うことのできない抜群の美しさは、昨夜神田の家を飛出したはずの、志賀内匠の妻お関の浅ましい姿でなくて誰であるものでしょう。

「親分」

「やはり、思った通りだ」

平次は死骸の裾口や胸を直してやりながら、片手拝みの手をそのまま指して、八五郎の驚く顔を迎えます。

「あ、お内儀。何てことをしやがるんだろう」

ガラッ八も眼をしばたたきました。美しい人の死は、あまりにも残酷で、二た目とは見られません。

「銭形の親分、この仏様を知っていなさるのかい」

横合から顔を出したのは、土地の御用聞、目黒の与吉という中年者でした。

「知っているどころじゃねえ、昨夜から行方を探していたのさ。神田明神様裏の、志賀内匠という浪人のお内儀だ」

「ヘエ――ひどい事になったものだね、いずれは情事の怨みだろう、――だから美い女には生れたくないな」

与吉はそう言って、死骸の首のあたりを指すのです。