Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens

Aozora Bunko

と平次、赤い毛氈を掛けた床几を引寄せ加減にし、腰から煙草入を抜きます。

「有難うございます。とんだお手数をかけて相済みませんが、綱吉親分が手前どもの店を出たのは子刻少し前で、とんだ好い機嫌でございましたが、まさか、あんな事になろうとは――」

今朝から同じ事を何遍も繰り返したらしい親仁は、神田で鳴らした御用聞の顔を見ると、暗誦するような調子で、こう始めるのでした。

「爺さん、俺は御用聞には相違ないが、この辺は柴井町の友次郎兄哥の縄張だから、今日はそんな用事で来たんじゃねえ」

「ヘエ」

「久し振りで神明様へお詣りをして、近頃評判のお常坊の顔でも見ようと思ってネ」

「ヘエヘエ左様でございましたか、とんでもないことをお聞かせいたしました。いえもう、私にしても、こんな話は繰り返したいわけじゃございません」

「そうだろうとも」

そんな話をしているところへ、赤前垂に、型のごとく片襷をかけたお常が、真鍮磨きの釜から湯をくんで、新しい茶を入れて持って来てくれます。

「いらっしゃいまし、親分さん」

「お常坊、評判ほどあって美しいことだね」

「あれ」

袖口を唇に当てて、恥らう風情に顔を反けたお常は、全く男の一人や二人は殺されても不思議のない美しさでした。