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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens

Aozora Bunko

ではありません。

湯島の崖を背負って、大きな敷地に建った山崎屋の裕福な家の中が、ワクワクするような緊張を孕み、集まった親類縁者近所の衆が、ガラッ八の八五郎を迎えて、固唾を呑むのです。

「御免よ、――内々で番頭に逢いてえが」

「その事でございます、親分さん」

顔見知りの久蔵、――死んだ隠居の配偶の妹の亭主、男芸者などをしていた、評判の宜しくない五十男が、眼顔で八五郎を人気のない奥の一間へ導き入れるのでした。

「番頭か若主人でないと困るが、実は――」

ガラッ八は一両二分の件を切出し兼ねてモジモジしました。

「ヘエヘエ、早速こちらから、お届けするはずでしたが、取紛れてこの始末でございます。もう、あの、お聴きでございましたか、親分さん」

「…………」

「お上のお耳は、早いものでございますなア」

何が何やら解りませんが、ガラッ八の用件とは、だいぶ見当の違った事件が起っている様子です。一両二分と香奠の一朱を懐の中で掴んだまま、ガラッ八は何もかも呑込んで来たような顔をする外はありません。

「言ってみるがいい、――一体どうしてそんな事になったのだ」

「誰が密告したか解りませんが。