Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
これを、保元、平治の大乱にみても、例外ではありません。むしろ、その病巣の深さ、複雑さ、奇怪さに、当年の史記も疑われるばかりであります。
けれど、鳥羽法皇の院政や、後宮美福門院をめぐって、藤原貴族政治の末期にあがいた人々の演じた人間宿業劇は、余りにも、生々しいものでした。内裏や仙洞御所は、その活舞台です。崇徳天皇も、近衛幼帝も、みなこれ、畏き傀儡たるにすぎません。神にもあらず、人間にもあらず、ただ奇しき陽かげの御生命であったに過ぎない。
こうまでして、権力や栄花に妄執した貴族心理は、われら庶民の理解には、遠すぎて、縁なきもののようですが、次に、地下から擡頭した新興勢力の平家一門も、また源氏の野人も、次々に、同じ軌を泥上にえがいて、宿業の車輪は、興亡、流転、愛憎、相剋、猜疑、また戦争など、くり返しくり返し止まるところがなかったのです。今日といえ、この人間苦、人間愚の無限軌道は、果てなき思いがしないでもありますまい。
――古典平家物語は、いわばそのころの、日本百年の弔鐘でした。迂作、この一篇も、悔悟の古塔を巡礼しながら、古典に曳く鐘の余韻に、今日は末世か創世か、もいちど、無常の真理を聴こうと思うものであります。