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あめのたまがわしんじゅう

雨の玉川心中

山崎 富栄

Read 雨の玉川心中 (あめのたまがわしんじゅう) by 山崎 富栄 (やまざきとみえ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 63,997 characters · 129 screens

Aozora Bunko

十八日には海岸通りの本館に一泊することになっているので、靴も少しは磨いておこうと路傍のみがき屋さんに磨いてもらう。二十円。となりの「兄ちゃん」風の修繕屋さんがノコノコ出てきて、ラバを張っておいたほうがよいですよ。砂利道を歩いたでしょう。ですから底のシンが折れて表面に横すじが出ています。「いまのうち――」といわれて、マンマと三百八十円。随分ひどい。

山の崖道で「花の木」と土地の人たちが言っている美しい若い花を手折る。それから別館の入口ですずらんのような美しい一枝。

お酒をお飲みになって、いつもよりよい御機嫌になられて義太夫をうなりはじめる。六、七段ほども、あれこれと、おやりになって、あとは新内――。声色(御得意の羽左、梅幸)東京でおききしたよりは、声量もずっとあって、お上手でしたけれど、あとでお体が悪化しないかと、そればかりが心配で聴いていてもはらはらしてしまう。

まだ血痰は出ないけれども、うす黒い、ごみのような痰が出る。これは病気が進行している証拠だと、いつか仰言っていられたけれど、どうにもならないものなのだろうか。

昨夜は胸のエキホスをとり換えながら、修治さんは悲しそうな顔をなさっていられる。