Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あめのたまがわしんじゅう
雨の玉川心中
山崎 富栄
Read 雨の玉川心中 (あめのたまがわしんじゅう) by 山崎 富栄 (やまざきとみえ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 63,997 characters · 129 screens
八月二十四日
あのときは仕方がなかったんですもの。それにちゃんと日を決めてお話して差し上げたのに、それでなくてさえ御丈夫なお体でもないのでしょうに、ひどい。宮崎さんには前にも一度お目にかかっていたので、それにあのとき太宰さんと御一緒だということが、とても楽しそうにみえましたので、お休みになりますならと、ちょっとお上げする。千草からビールと焼酎を持参する。失礼だなあと感じたところもあったけど、まあまあと。
「先生は近ごろあまり書きすぎますね。自殺するんじゃないかと思うんだ」
と北山さん。胸をつかれる。毎日が死との闘争。一字一句が死との闘い。太宰さんを、一面ずつ知っていくことは悲しいけれど、近づいていく喜びもある。
「貴女このごろ、顔の色がよくありませんね」と野原氏。
よくありませんとも。死んでしまうまで、誰にも、なんにも知られたくはない。そしてまた誰も、なんにも知らないでいる深い理由を。死んでしまって、誰にも分からないことだらけ。二人だけで沢山だ。
八月二十四日
おひる近く、コンテと帰ってくる。朝、太宰さんがおみえになられた由。買物籠を下げてみえました、といつにない小母さんの顔。