Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens
とかく、目明しなどという者は、八ツ当りに当った時と慢心の味に狎れて、いつでも物の裏を観よう、裏を行こうとする癖があるから、正直に、表が表で来たり、白が白で目の前に存在していたりすると、かえって己れの小智慧にからかわれて、神楽堂の外で神楽舞をやっているような、お話にならない骨折損をやるものだ――ということを、この時万吉、悟ったかどうだか。
「では、お千絵様でいらっしゃいますな。さようなら申しあげますが……」と閉まっている窓の下から頭を下げて、
「実はわっしは、大阪表からまいりましたもので、はい、是非折り入って内密にお目にかかりたいと存じますが」こういって、彼はまた向うの声を待っていた。しかし、こっちでさんざん疑心を抱いたように、先でも多少の警戒をもつとみえて、待てど容易に返辞がない。
で万吉は、その疑惑を先に解いて貰うために、
「決して、お案じなさる者じゃございません。あなた様のよくご承知な、法月弦之丞様からの使いで、大事な用をおびてまいった者でございますから」
「えっ……」と驚く声。
「はい」
応えがあったと万吉は固唾をのむ。
「法月さんから?」
「ご存じでございましょうが」