Japanese reading practice

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens

Aozora Bunko

お十夜孫兵衛!

きゃつだ! まぎれもなき十夜頭巾。

――野郎、どうしてこの江戸表へ来たのかしら? と万吉、鋭い眼をくれながら、ソロリ、ソロリ、と草履を摺って廻ると、お十夜もまた同じ気構え、同じ敵意。

岡ッ引きめ。

来おったナ、命を捨てに。

どうしても、おれの差している助広の錆になれと、三世相に書いてあるような奴だ。

大阪以来ここしばらく、そぼろ助広にもうまい生血を舐めさせない。

斬ッてやろうか! バッサリと。

「だが待てよ……ここは俺にゃ大事な瀬戸際だ。せっかく今日、お綱を見かけてこれまで突きとめてきたものを、また関の山の時のように、とち狂われちゃ堪らねえ。まア、向うでそしらぬ顔をするなら、こっちも横を向いていよう」

こういう腹で見ているのだ。

万吉は腕がムズムズしてきた。

彼の心もまた叫ぶ。

獣め!

見ていろよ。見ていろよ。

方円流二丈の捕縄が、今に、てめえの喉首をお見舞い申して、その五体を俵ぐくりに締めあげるぞ。

ああ、腕が唸って堪らねえ。

だが、当分は見遁してやら。おれにゃ別の大望があるからよ。けッ! それさえなけりゃ、汝なんぞ、半日だッてこの人間界へおくもんけえッ!