Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens

Aozora Bunko

見ると、庭には点々と血汐の痕、戸障子は八方へ無残に倒れ、甲比丹の三次と荷抜屋の手下二人は、常木鴻山が後ろ手に縛し上げてしまった様子。

「やられましたな、常木先生、いやどうも大変な血汐で……」と源内は酸鼻に顔をしかめながら、気味悪そうに、拾い歩きをして入ってきた。

「そして、俵殿はどうなさいましたか」

「お十夜と申す奴だけが、素早く逃げ失せたので、後を追って駈けだしました。ところで、源内殿にはお気の毒ながら、そこに倒れている目明し万吉、ちょっと手当をしてやって下さるまいか」

「承知しました。薬餌のほうなら源内のお手の物……オ、これや気絶している、数日の疲労があるところへ、ドッと助勢が見えたので、一時に心が弛んだのであろう」

井水を汲んで口へふくませ、自家の薬丹を印籠から取り出しなどしている間に、鴻山は、縛し上げた三次や二人の手下を引っ立て、一室にほうりこんで厳重にとざしてしまった。

そこへ、俵一八郎が、息を弾ませて帰ってきた。「残念!」と流るる汗を拭きもあえず、常木鴻山の前へ片膝をついて、「森端れまで追ッかけましたが、孫兵衛めは、腕の鋭いばかりでなく、怖ろしい敏捷なやつ、たちまち姿を見失って、何とも無念に存じます」