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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
Read 鳴雪自叙伝 (めいせつじじょでん) by 内藤 鳴雪 (ないとうめいせつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,693 characters · 377 screens
各これを揚げて楽むこともするが、唯揚げるばかりでなく、凧合戦をする事が盛んであった。これは子供でなく、二十歳近くの者が先立ってやった。合戦というのは隣屋敷の凧とからまし合いをすることである。私の屋敷では、北隣は久留米藩有馬家、南隣は島原藩松平主殿正、西は砂土原藩小さい方の島津であった。私どもの屋敷ではこの三つの藩邸と凧合戦をした。からんで敵の凧をこちらへ取ったのが勝となっていた。遂には罵り合を始め、石の投げ合までにも及んだ。そこで藩々の役人等は、互に相済まぬというので青年を戒めたが、その当座は止めていても、ほとぼりが醒めるとまた始めた。それでまずは黙許という姿であった。
からまし合いは、とても子供では出来ないので、大きい人に貸して、戦に勝つと敵の凧はその勝凧の持主なる子供のものになるので、自分の凧が殖えるので喜んだ。もっとも大概からまし合った凧は折れ破れて揚げることなど出来ぬものであったが、分取品を得た誇りがあったのである。あまり大きい凧は不利益であった。まず西の内紙二枚半というのが戦に適当で、四枚六枚八枚のは唯揚げて楽しんだ。戦には風の向きでよほど得失があったが、巧な者は手繰ることが早いから風の向きのみで勝敗が決するという事もなかった。