Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
と呟いて桂子は立ち、卯ノ丸に向かって声をかけた。
「これまで時々あらわれて、わたしをどこかへ連れて行こうとしたねえ。今度こそお前の云うとおりになるよ。お前たちの世界で住むことにするよ。……何んてまアお山は清浄なんだろう!」
赫々とした夏の真昼陽に、樹々は濃い緑から汗を流し、草花は芳香を強く立て、渓流は軽快な笑声を上げ、兎や鹿は木の間に刎ね、一切万象は自由に大胆に、その生命を営んでいた。
でも数十丈もあるらしい、鉄壁のような大岩が、湾のように開けている巨谿の一部と、この岩石層とを遮って聳え、絶佳の眺望を遮っていた。
それに向かって、桂子は立った。
(わたしは飛天夜叉に帰った筈だ! 飛天夜叉の力を験してみよう!)
生き肌断ち、生食物断ち、塩断ち、火断ちして長い月日を、この大峰の大岩石層で、難行苦行した桂子であった。一旦失った超自然力が、復活って来ない筈はなかった。わけても今日は彼女の身心に、霊力と精力とが感じられた。桂子は大岩の前に立った。しかしその時大岩石層の下の、道のない断崖を六人の男女が、こなたを目ざして喘ぎ喘ぎ、蟻のように小さく登って来るのが見えた。