Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
十四
傍にいる私はむずがゆい心持がしたが、母の言葉を遮る訳にもゆかないので、黙って聞いていた。病人は嬉しそうな顔をした。
「そりゃ結構です」と妹の夫もいった。
「何の口だかまだ分らないのか」と兄が聞いた。
私は今更それを否定する勇気を失った。自分にも何とも訳の分らない曖昧な返事をして、わざと席を立った。
十四
父の病気は最後の一撃を待つ間際まで進んで来て、そこでしばらく躊躇するようにみえた。家のものは運命の宣告が、今日下るか、今日下るかと思って、毎夜床にはいった。
父は傍のものを辛くするほどの苦痛をどこにも感じていなかった。その点になると看病はむしろ楽であった。要心のために、誰か一人ぐらいずつ代る代る起きてはいたが、あとのものは相当の時間に各自の寝床へ引き取って差支えなかった。何かの拍子で眠れなかった時、病人の唸るような声を微かに聞いたと思い誤った私は、一遍半夜に床を抜け出して、念のため父の枕元まで行ってみた事があった。その夜は母が起きている番に当っていた。しかしその母は父の横に肱を曲げて枕としたなり寝入っていた。父も深い眠りの裏にそっと置かれた人のように静かにしていた。