Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
「いま、この」と岡安は窓のほうへ手を振りながら云った、「――風に花の香が匂っているが、おまえにわかるか」
栄二は三度ばかり空気を嗅いでみてから、黙って首を左右に振った。
「いま吸っている九月の風の」と岡安はまた云った、「この爽やかな、ひんやりとした味が私にはなんとも好ましい、風には四季それぞれの、違った匂いと味と肌ざわりがあるが、私はこの秋のひんやりとした、爽やかな風がいちばん好きだし、この風を味わっていると、生きていることのよろこばしさが感じられる、ことにいまのように、もくせいの花の香に染まっていたりするとな」
栄二は訝しそうに、岡安の顔を見まもっていた。自分を呼びとめておいて、なんのために風の匂いだの肌ざわりのことなんか話すんだ、どういうわけだ、と栄二は思った。
「おまえはどうだ」ふた呼吸ほどして岡安は静かにきいた、「風の肌ざわりに秋を感じたり、送られてくる花の匂いをたのしんだりしたことがあるか」
栄二は答えなかった。
「まだとしが若いから」と云って、岡安は唇に微笑をうかべた、「――そんな年寄りくさいことは知らない、と云いたいところだろう、しかしこれはとしの老若にかかわらず、そういう気持があるかないかのはなしだ、さあ、よく嗅いでみるがいい、いま匂っているのはもくせいの花だぞ」