Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
十六の一
と栄二はまっ先に云った、「――見ているとばかにでもなっちまいそうないい景色なんだ、こっちにこう富士が見えて、おっそろしく広い海がぐるっとこうあって、浜にはまっ白な波がさーっと、絶えまなしによせていてさ、風なんぞおめえ、だしでもきかしてあるんじゃねえかと思うくれえ、うめえんだ」
「湯へいってらっしゃいな」おすえは笑いながら云った、「埃だらけですよ」
「こんな時刻の湯は垢だらけだ、うちで湯を沸かして拭くだけにしよう」と栄二は帯をしめながら云った、「それよりも初めに断わったとおり、こんどの仕事にはおすえもいっしょにいくんだぜ」
「江ノ島だなんて、そんな遠いとこへいくのこわいわ、あたし」おすえは栄二のぬいだ物を片よせて立った、「いますぐにお湯を沸かします」
疲れてるんでしょう、少し横におなりなさいな、と勝手からおすえが云った。仕事は思っていたとおり本筋の第一流だ、と栄二はおすえの言葉を聞きながして云った。これが江戸ならたちまち名が売れるんだが、名なんかはまだどっちでもいい、独り立ちになって初めての仕事に、こういう本筋のものが当るなんてそれだけでも運がよかった。