Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
「いいえ云わせて下さい、もうひとことですから」とおすえは指で眼がしらを拭きながら云った、「――あんたをお嬢さんたちに取られないようにするには、綿文へあんたが出入りできないようにするほかはない、あたしはそのことばかり思い詰めていました、それから、――あとになってどうしてあんなことができたか、自分でもわからないんですけれど、綿文の旦那さまが、あの切を大切にしているのを知っていたので、それで、ふらふらっと」
「もういい」と栄二が云った、「あとは聞かなくってもわかってる」
「ごめんなさい」
泣くな、と云って栄二は膝ですり寄り、おすえの躯を両手で抱いた。
「ごめんなさい、堪忍して」おすえは栄二の胸にすがりつき、咽びあげた、「あたし、あんたのおかみさんになりたかった、それだけで頭がいっぱいだったの、ほかのことはなんにも考えられなかったのよ」
「それでいいんだ、それでいいんだよ」と栄二は抱いた腕に力をこめながら云った、「それがいい証拠には、みろ、おれたちはこうして夫婦になってるじゃないか」
「堪忍してくれるの、あんた」おすえは嗚咽で喉を詰らせながら、栄二の胸へ顔をすりつけた、「――あたしのこと、追い出さない、お願いだから追い出さないでね」