Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
「このまえはそうは云わなかったぜ」
三人のやくざと喧嘩になったあと、栄二がそのことを語ると、おのぶは話をうまく作って脇へそらした。その口ぶりで、本当のことを云ってはいないなと察したが、栄二はそのまま聞きながしたのであった。
「云わなかったわ、だって云おうったって云えることじゃないんですもの」
「いまなら話せるのか」
「栄さん今日はどうしたの」とおのぶは栄二の顔をさぐるように見た、「――いつもはあたしのことなんか洟もひっかけやしないのに、今日に限ってずいぶん気にかけて下さるじゃないの、あんまりうれしがらせないで」
「そんなふうに聞えたら勘弁してくれ、そんなつもりで云ったんじゃあねえんだ」
「いや、あやまったりしないで、――たとえ嘘でもいい、栄さんがちょっとでも気にかけて下されば、あたしなによりうれしいのよ」
そして急に、おのぶは袂で顔を掩った。いまにも泣きだしそうにみえたので、栄二は狼狽した。
「酒を頼むぜ」と彼は乱暴に云った、「もうここはすっかりだ」
おのぶは黙ったまま立ち、顔をそむけて土間へおりた。まもなく、燗徳利を二本持って戻ったとき、おのぶの顔は洗ったようにさっぱりとし、あいそのいい微笑をうかべた口許から、八重歯を覗かせていた。