Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
老人は茶を飲み干した茶碗を膝の上に握りながら、「その中お宅へ伺ってお話を伺おうと思っているのだがね、年をとると、つい袴をはくのが面倒でな。そうかといって、初めて伺うのに着流ではあまり失礼だし、何か好い折がと思っているのだが、お前はその後もやはり出入りはせんのかね。」
「はい。そのままになっております。兄ばかりならかえって遠慮が御在ませんけれど、義姉の手前も御在ますから。」
「それは大きにそうかも知れない。」
「とにかくわたくしが悪いのにちがいは御在ませんのですから、別にどなたの事もお怨み申してはおりません。」
「その心持があればもう立派なものだ。」と言った時、した古法帖の上に大きな馬蠅が飛んで来たので、老人は立って追いながら、「過を改むるに憚ること勿れ。若い時の事はどうもいたし方がない。人間の善悪はむしろ晩節にあるのだよ。」
鶴子は何か言おうとしたが、自分ながら声が顫えはせぬかと思ってそのまま俯向くと、胸が急に一杯になって来て、どうやら眼が潤んで来るような心持がした。折好く勝手の方に人の声がしたのを聞付けて、これ幸とあわてて坐を立った。老人は馬蠅の飛び去る方を睨みながら、「酒屋か郵便屋だろう。