Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
引返して橋を渡って、佐野(停車場の名も以前は佐野と呼んでいた様に其処は佐野という土地である)の町へ出たが、前に困った道端へ出てまた途方に暮れた。朝日もそろそろ暑くなっていた。兎に角もう少しこの道路を上の方へ登って草の深い渓ばたにでも出会ったら其処で遊んで帰ろうと心をきめた。
その道路沿いにもさびしい宿場町が続いていた。門口にはちょろちょろと澄んだ水が流れて、ダリヤ、おいらん草、松葉菊などの紅い草花が水のほとりに植えられてあった。五六町でまた田圃中に出た。金時足柄長尾などの低い山垣が田圃越しの右手に見え、左には野原を距てて森の深い愛鷹山の墨色が仰がれた。富士は此処に来ると、愛鷹を前にせず、ただ単独に青広い野の中に聳えているのである。見馴れた雲というものが一片もそのあたりに見えない。千とか二千とかいう登山客が今日は大喜びでその山を這い登り這い下りしているのであろうと思いながら仰いでいるとそぞろにその晴れたあらわな山の姿に微笑が湧く。
なお十町も歩いてゆくと、不図左手に立てられた古びた木札に佐野瀑園五竜館佐野ホテル入口と和洋の文字で認められてあるのを見た。