Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
十月廿六日。
這いつ坐りつ、底には細かな砂の敷いてある湯の中に永い間浸っていた。いま我等が屋根の下に吊した提灯の灯がぼんやりとうす赤く明るみを持っているだけで、四辺は油の様な闇である。そして静かにして居れば、疲れた身体にうち響きそうな荒瀬の音がツイ横手のところに起って居る。ややぬるいが、柔かな滑らかな湯であった。屋根の下から出て見るとこまかな雨が降っていた。石の頭にぬぎすてておいた着物は早やしっとりと濡れていた。
註文しておいたとろろ汁が出来ていた。夕方釣って来たという山魚の魚田も添えてあった。折柄烈しく音を立てて降りそめた雨を聞きながら、火鉢を擁して手ずから酒をあたため始めた。
十月廿六日。
起きて見ると、ひどい日和になっていた。
「困りましたネ、これでは立てませんネ」
渦を巻いて狂っている雨風や、ツイ渓向うの山腹に生れつ消えつして走っている霧雲を、僅かにあけた雨戸の隙間に眺めながら、朝まだきから徳利をとり寄せた。止むなく滞在ときめて漸くいい気持に酔いかけて来ると、急に雨戸の隙が明るくなった。
「オヤオヤ、晴れますよ」
そう云うとK―君は飛び出して番傘を買って来た。