Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
「いい梅でしょう、わたしが自宅から持って来たの」
あやしげな女がひょっこり入って来て煙草をねだりながら云う。活けたのもお前か、と訊けば、それは此家の旦那だと正直に頭を振る。不図思いついた事があって沼津在に二瀬川という所があるそうだが、と尋ぬると二瀬川はツイこの川向うで、わたしの家はその隣村だという。そんなことから、私はもと上州前橋の生れで、沼津の廓に身を売り、その何とか村の者に受出されていたが姑との仲が合わず、今は此処に預けられている。兄さん(と彼女は云った)は旦那より五つ年下だと側の宿帳をひろげながらの身の上話などが出た。そのうちに階下から呼ばれて降りて行ったがまた上って来て、此家の旦那は根が遊人だけによく解っているがお内儀さんは芸者上りの癖にちっともわけが解らず、辛らくて為様がないという風の事をまだ抜け切らぬ上州弁で話して、たとえ何にせよ宿屋一軒に番頭板場が居るでなし、女中はわたし一人で昼は子守までさせられ、肩が張って斯の様だと骨をめきめきいわせながら泣顔をする。
漸く私も酔うのを断念して、直ぐ床に入る。風はいよいよひどい。明日はどうせ汽船は出まい、そうなればその二瀬川の知人を訪ねて見ようなどと思っているうちに案外に早く熟睡した。