Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
然し、甲板の上は富士どころの騒ぎでないのであった。三つずつ積み重ねて七八所に束ねてあった空樽が余りの動揺にいつか束ねた縄を切って一斉に甲板の上に転げ出したのである。甲板にいた人たちは幾らか船に強い方の人であるべきだが、うち見た所私のほかには最初強風を予言した例の痩老人のみが先ず生色あるのみで、他は大抵もうへたばってしまって居る。汚物の鑵が倒れ溢れても起さず、汐を被っても拭わず、ただもうべったりと甲板にしがみついているのである。その上を鱗だらけの空樽が幾つとなく転げ廻るのだから耐らない。思わず私も手を出しかけたがつかまっている手を離せば忽ち私自身空樽同様とならねばならない。為方がないから唯だ大きな声を上げた。私と反対の側に掴って立っていた老人も等しく金切声を張りあげた。聞きつけて船長らしい大男と今一人若いのとが出来たが、彼等だとてそう自由に歩けるものではない、暫く樽と角力をとっていたが流石に如何にかくくりつけてしまった。今までの遠景から眼を移してその樽の転げるのを見廻しているうちに私も何だか少し気持が変になって来た。嘔くのかナ、と思っている所へ向側の老人が這う様にして私の方へやって来た。