Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
十月廿一日。
「止そうよ、これが土地の風かも知れないから」
となだめて、急いで彼を湯に誘った。
この分では私には夕餉の膳の上が気遣われた。で、定った物のほかに二品ほど附ける様にと註文し、酒の事で気を揉むのをも慮って予じめ二三本の徳利を取り寄せ自分で燗をすることにしておいた。
やがて十五六歳の小僧が岡持で二品ずつの料理を持って来た。受取って箸をつけていると小僧は其処につき坐ったまま、
「代金を頂きます」
という。
「代金?」
と私は審った。
「宿料かい?」
「いいえ、そのお料理だけです、よそから持って来たのですから」
思わず私はK―君の顔を見て吹き出した。
「オヤオヤ、君、これは一泊者のせいのみではなかったのだよ、懐中を踏まれたよ」
十月廿一日。
朝、縁に腰かけて草鞋を穿いていても誰一人声をかける者もなかった。帳場から見て見ぬ振である。もっとも私も一銭をも置かなかった。旅といえば楽しいもの難有いものと思い込んでいる私は出来るだけその心を深く味わいたいために不自由の中から大抵の処では多少の心づけを帳場なり召使たちなりに渡さずに出た事はないのだが、斯うまでも挑戦状態で出て来られると、そういう事をしている心の余裕がなかったのである。