Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
「アッ、其処に来ますよ、M―さんが……」
と叫んだ。囚人などの冠る様な編笠をかぶり、辛うじて尻を被うほどの短い袖無袢纏を着、股引を穿いた、老人とも若者ともつかぬ男が其処の沢から登って来た。そして我等が彼を見詰めて立っているのを不思議そうに見やりながら近づいて来た。
「君はM―君ですか」
斯う私が呼びかけると、じっと私の顔を見詰めたが、やがて合点が行ったらしく、ハッとした風で其処に立ち留った。そして笠をとってお辞儀をした。斯うして向い合って見ると、彼もまだ三十前の青年であったのである。
私が上州利根郡の方に行く事をば我等の間で出している雑誌で彼も見ていた筈である。然し、斯うして彼の郷里まで入り込んで来ようとは思いがけなかったらしい。驚いたあまりか、彼は其処に突立ったまま殆んど言葉を出さなかった。路を教えて呉れた百姓も頬かむりの手拭を握ったまま、ぼんやり其処に立っているのである。私は昨夜沼田に着いた事、一緒にいるのが沼田在の同志U―君である事、これから法師温泉まで行こうとしている事、一寸でも逢ってゆきたくて立ち寄った事などを説明した。
「どうぞ、私の家へお出で下さい」