Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
と漸くいろいろの意味が飲み込めたらしく彼は安心した風に我等を誘った。なるほど、ツイ手近に来ていながら見出せないのも道理なほどの山の蔭に彼の家はあった。一軒家か、乃至は、其処らに一二軒の隣家を持つか、兎に角に深い杉の木立が四辺を囲み、湿った庭には杉の落葉が一面に散り敷いていた。大きな囲炉裡端には彼の老母が坐っていた。
お茶や松茸の味噌漬が出た。私は囲炉裡に近く腰をかけながら、
「君は何処で歌を作るのです、此処ですか」
と、赤々と火の燃えさかる炉端を指した。土間にも、座敷にも、農具が散らかっているのみで書籍も机らしいものも其処らに見えなかった。
「さア……」
羞しそうに彼は口籠ったが、
「何処という事もありません、山ででも野良ででも作ります」
と僅かに答えた。私が彼の歌を見始めてから五六年はたつであろう。幼い文字、幼い詠みかた、それらがM―という名前と共にすぐ私の頭に思い浮べらるるほど、特色のある歌を彼は作っているのであった。
収穫時の忙しさを思いながらも同行を勧めて見た。暫く黙って考えていたが、やがて母に耳打して奥へ入ると着物を着換えて出て来た。三人連になって我等はその杉木立の中の家を立ち出でた。