Japanische Klassiker mit Furigana
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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme
食いおわった杏の種子を、陽にかがやく海に、抛ろうとしてから、ふと思い直し、ポケットのなかに、しまいこみました。
しばらく海をみてから、もう練習かなと、Bデッキを瞰下すと、皆はまだ麻雀でもしているのでしょう。甲板にいるのはデッキ・チェアに寄りかかったあなたと、船客で羅府行の第二世のお嬢さんだけ。二人で、なにか仲良さそうに話している。こちらは、莫迦みたいに、頬笑んで、瞰下していると、あなたは、直ぐ気づき、上をむいて、にっこりした。隣のお嬢さんも、おなじく見上げる。ぼくは、視線のやりばに困るから、船尾のほうを眺めるふりをしている。とまもなく、第二世のお嬢さんは、眼をつむり、寝てしまっている様子です。
思いきって、ぼくが合図に、右手を高くあげると、あなたも右手をあげて振る。ほんとうに、片眼をおもいッきり、つぶってウインクをしてみる。あなたの顔は、笑いだす。ぼくも、だらしなくにこにこします。
一瞬、船は停り、時も停止し、ただ、この上もなく、じいんと碧い空と、碧い海、暖かい碧一色の空間にぼくは溶け込んだ気がしたが、それも束の間、ぼくは誰かにみられるのと、こうした幸福の持続が、あんまり恐しく、身体を翻えし、バック台の方へ逃げて行き、こっとん、こっとん、微笑のうちに、二三回ひいてから、また、手摺まで走って行ってはあなた