Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かわいいやま

可愛い山

石川 欣一

Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme

Aozora Bunko

私は結婚をして二人の親となった。私は色々な経験をし、その経験は私の趣味や思想や人生に対する態度を非常に変化させた。一言でいえば、私はこの十数年間に「変った」のである。人間として進化か退化かは知らぬが、とにかく変ったのである。だが、たった一つ変らぬもの――それは即ち私の山を思う心である。

十数年前、明けて行く三等車の窓から、寝不足な眼を見張って、遠く朝日に輝く山の雪に高鳴りをした私の心は、今や寝台車の毛布をはねのけ深緑色のブラインドを引き上げて、同様に高鳴る。十数年前、二高の北に面した窓から泉ヶ岳を眺めてボンヤリした私の心は、今や輪転機が轟々として鳴り響く新聞社の窓から、ふと僅かな青空を仰ぎ、その空の下にあるものが、新聞社や商館や乗合自動車ばかりではないことを感じて、ボンヤリするのである。

花の香漂う宴遊のむしろならぬ四畳半、訳の判らぬ癇癪と我儘に若い妓たちが脅えたような顔を白く並べる時、金屏をもれる如月の宵の寒い風が頸に当って、突然脳裡を横切る黄金色の雲の一片と、その下にそそり立つ真紅のピーク。夕陽にやけているのである。打てば火花を散らす色である。