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Japanische Klassiker mit Furigana

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かわいいやま

可愛い山

石川 欣一

Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme

Aozora Bunko

嘆きの花嫁――山での話――

その中のどれが槍であろうが薬師であろうが、今の自分には無関係である。自分には別の用事がある。

右手のピークから続いている細い尾根、その上にベタッと繁った偃松。私は帽子をひろって、その偃松の方へ歩み寄る。恰好な場所を見つけて、長い身体を枝の上に横たえる。枝はしなって、やわらかく身体を受ける。思わず「フーッ」と息をつく。

雲片一つだに見えぬ大空、風、岩燕の声、血を新たにするような松脂の香、黄金の花粉、もつれ合って咲いている石楠花の白くつめたい花弁、すぐ向うの黒い岩塊、風に乗って来る渓谷の水音、どこかで岩の崩れ落ちる音、下で湯をわかしているらしい焚火の煙、……これ等のすべてがいつの間にか見えなくなり聞えなくなり、私は帽子を顔にのせたまま、世にも美しいユートピアの眠りに落ちるのである。十数年前の、世間を知らず酒を知らず恋をも知らぬ学生時代から、三十の坂を越してすでに二人の親になっている今日にいたるまで、夏が来ると山を思い、山に行けぬと鬱々として楽しまぬのは、実に山が偃松のカウチというアトラクションを持っているからである。

嘆きの花嫁――山での話――

ちょっと映画の題――それも五、六年前にでも流行したらしい――を思わせるし、山と花嫁とどんな関係があるのかと不審に思う読者もあろう……と、それをねらった味噌ではなく、この