Japanische Klassiker mit Furigana
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かわいいやま
可愛い山
石川 欣一
Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme
十一月の終り、突然大町へ行ったことがある。すっかり枯れ切った林をわけて、東山を登り、日の暮れ方に、何というか名は忘れたが、小さな部落に出た。一軒の雑貨店の囲炉裡にふんごんで、漬菜でビールをのんだ。家の前が街道、その向うが松林。林は街道に向ってゆるく傾斜している。傾斜に添うて妙に白々とした光が流れて来、どこかで子供が歌っていた――
夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘がなる
十数年来のよき山の友である大町のSは「ああ、石川さんも山へ来て子供のことを考えるようになった」と、淋しそうだった。まったく、私はその時、家に残した子供のことを考えていたのである。
最後に登った高い山は、針ノ木岳である。これも九月、小暇を得て出かけた。大沢小舎のすこし上、盛夏雪渓の終るあたりに、たった一本咲いていた紅百合。マヤクボの上の方は、りんどうの花ざかり。その晩は峠から白馬が、うそみたいに美しい色に見えた。
翌日は、いつもは滝で下りられない沢を、がむしゃらに下りた。真田紐でズボンの下を靴にしばりつけ、土砂が靴の中に入らぬようにしながら、私は黒部の渓谷の向うに見える立山の峯峯に見入っていた。