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Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

河口は出てゆき、良江は増田に酒をすすめた。増田はもう定量以上に飲んでいたけれども、自分では感情を害しているため、飲んだだけ酔ってはいないように思いこんでいて、すすめられるままに飲み続けた。

「あたしも一杯いただくわ」やがて良江も盃を持った、「お酌して下さいよ」

「いただく、とはござったな」増田は酌をしようとしたが、手がふらつくので酒をこぼした、「ははあ、おれの手は酔っちまったようだな、それっ」

「だめだめ、みんなこぼしちまうじゃないの、自分で注ぐからこっちへかして」

「済まねえ、済まねえな、良っちゃん」増田はそら笑いをし、良江の顔を見て頭を振った、「おめえ、初つぁんとこの、良っちゃんじゃねえか、へえー、こいつは大きなおどろきだぜ」

「また胸が鳴りだしたかい」

「胸が、――ああ胸か」増田は衿をひろげて、胸毛のところをさぐってみ、ふしぎそうに首をひねった、「へんだぞ、ことんとも音がしねえ、心臓も酔っちまったかな」

「どら、あたしがみてあげる」良江はすり寄って、彼の胸へ手を伸ばし、濃い胸毛を好もしそうにまさぐった、「――搏ってるじゃないの、こんなに、ほら、どきんどきんって、――ずいぶん強い動悸だわ、あたしの手をはね返しそうだわよ」