Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
「たのむよ親方、おらあもう帰らなくっちゃならねえんだ」
増田は相手を捉まえようとしてよろめき、どこかの家の戸袋へ倒れかかった。
「静かにしておくれ、誰だい」と女の声でどなるのが聞えた。それみろ、かかあは逃げやしねえや、ちゃんとうちにけつからあ、と呟いた。そうして戸袋からはなれ、頭をひねって考えた。
「待てよ、まあ待ってくれ」と彼はあたりを見まわした、「あの屋台店で鬼ころしをひっかけてよ、それから横丁へ曲って、――どっかではしごをやったな、いや、いやそんなこたあねえ、ねえか、ねえとすると」
「誰だい」とまた女が云った、「そこにいるのは誰だい」
「べらぼうめ」と増田がどなり返した、「そこにいるのは誰だい、とはなんだ、てめえの亭主の声を忘れるようなかかあが、どこの世界にある、そんな不実なかかあがどこの世界にあるかってんだ」
障子があいて、電燈の光りが格子の外まで伸び、土間へ勝子が出て来て覗いた。
「まあ、おまえさんじゃないか、どうしたのさ」
勝子は格子をあけた。
「じゃないか、とござったな」増田は土間へよろけ込んだ、「へっ、そんなことう云われて吃驚するようなこちとらじゃあねえぞ、ふざけたことうぬかすな」