Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

だがこれは通例ではあっても、不変なものではなかった。ときにその汁、またはめしやパンのあいだに、二人の味覚をよびさますような物の出て来ることがあった。

「ほう、これはこれは」と父が肉の小片を箸ではさみ出す、「珍しいな、ロースト・ビーフらしい、それも上手にレアーに仕上げてある、このまん中のとこを赤いままで焼き止めるのがこつなんだな、おまえ食うか」

「いいよ、とうちゃん喰べなよ」と子供は眉をしかめる、「ぼくは生焼けの肉は嫌いなんだ」

「牛肉ってものはおまえ」父親はその食い残しのロースト・ビーフを口に入れながら、まじめな口ぶりで云う、「ドイツやフランスでは生のまま食うんだぜ、ドイツだけだったかな、バイエルン地方だけのやりかたかもしれないがさ、玉葱と月桂樹の葉をレモン漬けにしてさ、その中へ入れておいたのを出してさ、玉葱の微塵切りとスパイスをのせてさ、生のまま黒パンといっしょに」

「粉チーズもね」と子供が口を添えると、「――それは違うか」

「好き好きだが、それは味がくどくなるだろうな」父親は噛んでいた肉をのみこんで、ちょっと想像してみてからおもおもしく首を振る、「うん、この場合粉チーズはいらないだろう、粉チーズはむしろ」