Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
子供は家へ帰ると、鍋を持って小屋へもぐり込む。父親はたいてい気持よく熟睡していて、そのときは子供も注意ぶかく、父親の眼をさまさせないように、そっと眠りにつくのであるが、早く寝ついた父親はすでに眠り足りていて、子供が帰ると眼をさますことが珍しくはなく、そのときはいつものような話が展開して、明けがたに及ぶことも覚悟しなければならなかった。
「寝ながら考えたんだがな」と父親は話しだす、「家を建てるにはさ、まず門というものが大切だ、門は人間でいえば顔のようなものさね、顔を見ればあらまし、その人間の性格もわかるんだな、あらましだけれどさ」
「そうだね、うん、ほんとだ」
「尤も、人はみかけによらないということわざもある、が、まあそんなふうに云っちまえば、――きみはねむったいんじゃないか」
「ねむくなんかないさ」子供は眼をこすりながら、たのしそうに答える、「大丈夫だよ」
彼は欠伸をする。のんべ横丁をまわって、神経をすりへらし、躯も疲れていた。足はだるいし、眼はいまにもくっつきそうである。けれども彼は力の限りそれらとたたかい、父親の話し相手になっている。父親は気づかないのだろうか、それとも気づいてはいるが、話し続けていなければならない理由があり、もしそれを中断すればなにか異常なことがおこる、とでもいうのだろうか。