Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

としは五十がらみらしいが、ぜんたいの感じはずっと若わかしく、いくらかなまめいてさえみえた。

平さんが留守だったので、女は小屋の外で待っていた。彼女は小屋の周囲をまわってみたり、閉めた窓の外に立っている枯れた木を眺め、その枝に触ってみたりしたうえ、羽目板に背を凭れ、しゃがんでそっと眼をつむった。――ここはどの長屋からもはなれているから、口うるさい人の眼につく心配はなかった。のら犬が二度ばかり通りかかったが、彼女を見ただけで、なんの関心も示さずに去っていった。

二時間ほど待ったとき、平さんが帰って来た。ぼんやりしていたらしい女は、小屋の戸をあける物音を聞きつけるなり、急に息の止ったような顔で立ちあがった。

白いきれいな女の顔が、さっと硬ばり、それが刷毛で塗るように赤くなった。いちど止った呼吸が、しだいに荒くなって、小さな包を抱えた手に力がはいった。女が開き戸をあけると、平さんはこちらへ背を向けて、古外套をぬいでいた。女は開き戸を閉めてから、あたしです、と呟くように云った。

平さんは外套の片袖をぬぎかけたまま振返った。女は包を胸に押しつけ、それで身を守ろうとでもするような恰好で、おじぎをした。