Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
この問題が中心議題の周囲をからまわりしていることは、断わるまでもない。しかし、からまわりをしているうちに二人の思考は、求心力の作用でやがて問題の核へぶっつかることができた。そしてそれは先生のいうとおり、じつに簡単明瞭なことなのだった。
「うちの塾生だ、それは」と先生はいった、「八田忠晴といって、三月ばかりまえに入塾した青年だ」
「先生じゃねえってか」
「ばかなことをいうな、この寒藤清郷は痩せても枯れても国士だ。そんなことはさっきから繰り返しているとおり、おはち本人にきけばわかることだ」
「それがうちにはいねえんだよ、先生」治助は上り框へ腰をおろし、厚い唇を指でつまんだ、「ゆうべ夜なかにとびだしたらしい、朝起きてみたらいなかったし、いまになっても帰って来ねえ始末なんだ、ほんとだよ先生」
「ぼくの塾生もゆうべからいなくなった、ぼくが気がついたのはやっぱり朝になってからだが、――するとこれは、駆落ちかもしれないな」
「かかあのやつは、自分の物をいっさいがっさい持ってった」と治助は独り言のように云った、「どうしてだろう、先生、おれとおはちは承知ずくで夫婦になった仲だ、そこにある石をおれが自分の独り思案で持ちあげて運んで来たようなもんじゃなかった、おはちのやつも自分で思案をして、このおれと夫婦になるほうがゆきさき心丈夫だと