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Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

京太は吃驚した。驚きのあまり彼は自分の躯からすりぬけてしまい、そこにあるのはもと京太であったが、いまはただなにかの脱け殻にすぎない、というふうな印象を与えた。――尤もそれはごく短い時間のことだ。彼はおたねが冷静そのものであり、問題は赤児を産ませるか中絶するかという、二つの点にしぼられていて、ドラマティックな感情など匂いもしないのに気づくと、いますりぬけた自分の脱け殻の中へ、いそいでまたもぐり込んだようにみえた。

「おまえは、まさか」と京太は反問した、「かつ子をなにしたのが、まさかぼくだと思ってるわけじゃないだろうな」

「あたしはどっちにするかってことを、きいてるだけですよ」

「それもそうだな」京太はわざと渋い顔をした、「二カ月の終りともなれば、どっちにするかをきめるのが先決議題だ、相手の詮索などはあとのことでいい、しかし断わっておくが、おまえは疑っているかしれないがおれじゃないぞ、冗談じゃない、伯父姪というより親子同様、戸籍だってはいっているのに、まさかぼくがそんな」

「どっちにしますか」おたねは亭主に云った、「産ませますかおろしますか」

「それはおまえ産ませる手はないな、としも若すぎるし世間ていもあるし、ここは倫理学よりも犯罪医学、いやその、あれだ、つまり法医学的な処置をとるほうが、合理的だと思うね」