Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「――できればなあ」福田くんは大きく深い溜息をついた、「それができたらなー」

以上の会話は一度に交わされたものでなく、二人でときたま酒を飲むたびに交わされたのを、総合し整理したものであって、実際にはもっと微妙で、刺戟的な細部がたくさんあった。けれども夫婦間の心理葛藤や肉躰的な消息は、単に言葉だけ追求しても役には立たない。現に、これらの会話がとり交わされた合間あいまにも、――それはほぼ五、六日から十日くらいの間隔を保ちながら、福田くんは突如としてろじへとびだし、二階を見あげて叫びだすのだ。

「やい、出ていけーっ」と彼はしんけんな顔で、右手の拳を空に突きあげる、「光子のやろう、出ていけーっ」

しかもそれから数時間のちにはもう、二階から光子の、は、じ、め、さん、ねーえ、というあまったるい囁き声が聞えてくるのであった。

「さ、ここにこれだけある」と或る夕方、相沢は幾枚かのさつを福田くんに差出しながら、友情をこめて云った、「――これを持ってどこかへ消えちまいな、きみは大学までいったそうだし、いわば前途多難なからだだ、おれがすすめたようなものの、廃品回収業まですればどこへいったって生きてはいけるよ、ああ、あとのことはなんとかなる、きみはたったいまここから逃げだすんだ、た」