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Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「お、また来やがった」もう一人の小僧は吃驚してとびのいた、「親方たいへんです、ちょっと来て下さい」

これには主人もあきれたようだが、としの功だけあって、とらの居坐りがなんのためであるかすぐに察し、ちょうど揚げ残りのてんぷらがあったのを、二つ三つ出してやれと命じた。石油罐に客の食いかすがあるから、それでたくさんだろうと小僧は云ったが、主人は黙って睨みつけた。猫もこのくらい権威者になるとごまかしはきかない、そこらのざっとした人間などより、趣味も嗜好もよほど洗練されている、ということを主人は知っていたようである。

とらは三つのてんぷらの内、海老を残して、あなごときすの二つを喰べると、口のまわりや髭などに付いた揚げ油を、左右の前肢でていねいに撫で、「天松」の人たちをではなく、「店」のほうをちらと横眼に見て、ゆったりとあるきだし、歩み去っていった。

「へえーえ」と無口な息子が、去ってゆくとらの姿を見送りながら感嘆の声をあげた、「云うこたあねえな」

これがとらと「天松」との、馴染になるきっかけになり、その後は両者の関係がずっとスムーズに続いていた。店先にゆきさえすれば、とらは必ずてんぷらの幾つかにありつけたし、痛めつけた小僧とも、――彼は猫咬症なんということにはならずに済んだが、――かくべつトラブルはおこらずに済んだ