Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
「おれはなにも知らない」彼は声に出して呟いた、「おれはまだ赤ん坊も同様だったから、――けれどもあにきは十二になっていた。あのめちゃくちゃな世の中で母と弟を自分が背負わなければならない、自分ひとりで背負うわけではないにしても、重荷の一端はかかってくる、却って自分のいないほうが、母にはやってゆきやすいんではないか、そうだな」
彼は唇を噛んで立停った。
「そうだ」と彼は自分に答えた、「おれだって逃げだしたかもしれない、考えるだけでもたまらなかったろうからな」
親きょうだいにまで隠して、こそこそ貯金をしていた自分こそ、けちな利己主義者だったともいえる。このみじめな「街」からぬけ出ようという考えも利己主義だ。ここに住んでいる多くの家族は、自分たちがおちぶれて迷い込んで来たとき、それぞれのかたちであたたかく迎えてくれた。
「その人たちの多くはここからぬけ出すことができない」
そうじゃないか。中には子供の代になっても、ぬけ出せない人たちがいる。その中で自分たちだけぬけ出してゆく、――いや、それはひどい利己主義だ。貯金はあにきに進呈しよう、けちくさい貯金なんかしなくとも、時期が来ればしぜんと出てゆけるだろう、貯金はあにきに進呈すべきだ。