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Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「机の上をなんとかしろよ」と辰弥は云った、「まるで屑籠をひっくり返したようじゃないか、よくそれで勉強ができるな」

「諄いなあ」と弟は云った、「こうしなければおれは勉強ができないんだって、何度も云っているじゃねえか、うっちゃっといてくれよ」

「辰弥かい」と勝手から母が呼びかけた、「茶箪笥におやつがはいっているよ」

「のらさんのみやげさ」と弟が低い声で云った、「ジー・アイの残飯の中からでも拾って来たらしいぜ」

のらさんとは、弟や妹たちがあにきに付けた呼び名であった。辰弥が茶箪笥をあけてみると、ふちの欠けた洋皿に、エクレアのような菓子が二つのせてあった。

「おまえ喰べたのか」

「犬じゃあないんでね」弟は振向きもしなかった、「アメちゃんの食い残しなんかまっぴらごめんさ」

もう米軍の残飯を食うなどということはなかった。実際にそれを喰べて飢えを凌いだのは、母と辰弥とすぐ下の弟くらいであろう。だが四男である彼は、それを喰べた母の乳で育ったというだけで、いまでも事ごとに激しい憎悪を感ずるようであった。

辰弥は菓子には手をつけず、茶箪笥の戸納を閉め、弟のそばへいって、あにきはおとなしく帰ったのか、と声をひそめてきいた。