Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
「お嬢さま! お嬢さま!」
蔦代はそう言って目を上げたが、言いたいことが言葉になってこないらしく、ハンカチで目を押さえて啜り泣きを始めてしまった。
「いいわ! 訊かないわ。蔦や! おまえ泣いたりなんかして、なんなの? おまえが言いたくなかったら無理に訊こうというんじゃないから、言わなくてもいいわ。ただ、おまえのことを心配してわたし言ってるのよ。おまえが言わなくても、わたしはだいたい分かっているんだけれど……」
「蔦代! おまえそんな黙ってなんか出ていかないで、何もかも打ち明けて相談して出ていったほうがいいぜ。蔦代!」
敬二郎が横から言った。しかし、蔦代はもちろんそれに答えはしなかった。彼女はただ目を伏せて、啜り泣いていた。
「いったい、どこへ行く気なんだい? え? 蔦代!」
それにも、蔦代はもちろん答えはしなかった。
沈黙がふたたび馬車の上を襲った。馬車はごとごとと走った。鞭がときどきぴゅっと鳴った。
4
馭者台の正勝は鞭を振り上げては馬を追うだけで、ただのひと言も口を利こうとはしなかった。彼は単なる馭者としての役目を果たしているだけだった。