Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
そこに妹の蔦代がいて、その身の上についての詮議が進められているのに、彼はそれに対しても耳さえ傾けてはいないような様子だった。少なくとも、正勝は馬車の上の三人の席と馭者台とを、全然別の世界にしているようだった。
しかし、正勝は馬車の上の詰問に対して、なんらの関心をも持っていないのではなかった。妹の蔦代の啜り泣きに正勝の心は涙を流していた。紀久子の親切めく言葉を軽蔑し踏みにじっていた。繰り返しての詰問に対しては抗議を叩きつけていた。
(蔦代がどこへ行こうと勝手じゃないか?)
正勝は心のうちに叫んだ。
(他人の意志までも自由にすることができるもんか。蔦代には蔦代の意志があり、おれにはおれの生命を懸けての意志があるのだ。あいつらのわがままが、おれたちの生命を懸けての意志までも押し曲げることができるものか)
だいいち正勝にとって、帰り道での計画を果たすのにたとえ妹にもしろ、他人にいられては具合が悪かった。
(蔦代が森谷の家を出ていこうというのなら、おれの力で蔦代を逃がしてやろう。なにも、あいつらの思いどおりになっていなければならないということはないのだから)
正勝は黙々として、妹の蔦代をいかにして逃がしてやるかについて考えつづけた。