Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
時雨は闊葉樹林の上に幽寂な音楽を掻き立てながら渡り過ぎていった。馬車は雨に濡れ、雨に叩き落とされる紅や黄の濡れ葉を浴びながら、原生樹林の底を走った。
やがて、幽寂な山時雨の音が遠退くにつれて、原生樹林の底はふたたび明るくなってきた。孔雀青の高い空から陽が斜めに射し込んだ。玻璃色の陽縞の中にもやもやと水蒸気が縺れた。樹木の葉間にばたばたと山鳥が飛び回った。落ち葉の海が真っ赤に、ぎらぎらと火のように輝きだした。正勝の心臓はどきどきと激しく動悸を打ってきた。
「あら! ずいぶんどっさりいるのね」
紀久子は樹木の枝を見上げながら言った。蔦代もその言葉に釣り込まれて目を上げた。濡れ葉を叩きながら、山鳥は幾羽も枝から枝に移り飛んでいた。紅や黄の濡れ葉がぎらぎらと午後の陽に輝きながら散った。
「正勝! あれ山鳥なの?」
「さあ?」
正勝は気のない返事をした。
「きっとあれは山鳥よ。わたしでも撃てそうね。撃ってみようかしら?」
紀久子はそう言って横から猟銃を取った。そして、弾嚢帯から弾丸を銃に込めた。
「正勝! 馬車をちょっと停めてよ。わたしだって撃てると思うわ」
馬車が停まると、紀久子は微笑みながら立ち上がって樹上に狙いをつけた。