Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
ぼくは本当にきみには済まないことをしたと心から思っているんだから」
永峯はいくぶんか顔を赧くして、頭を掻きながら言った。
「ぼくもなにも、きみを責めているのじゃないんだ。ただ、きみの持っている思想も結局、本物ではなかったんだということを言っているだけなんだ」
「ほくはきみからそれを言われるのが辛いんだ。ぼくのあやふやな思想が、態度が、きみを病気にしたのだから」
永峯は吉本の顔を見ないようにして、一塊の鉄のように頑丈な磁鉄製の灰皿へ煙草の灰を落としながら言った。
「そりゃきみ、きみだけじゃないさ。あやふやといえばぼくだってあやふやなんだ。要するに人間なんて一個の偽映鏡だよ。種類はいろいろあるがね。しかし、偽映鏡だよ。われわれは、われわれの環境の中でわれわれという偽映鏡を作られてきたんだ。そして、われわれという偽映鏡は大学を出て洋行して、博士になって、そして死んでいく。これを当然の世界として映していたんだ」
「型どおりにね」
「型どおりに。――ところが、世の中にはこれを当然として映さない偽映鏡もあるんだ。環境によってね。たとえばぼくらが工場へ行ったのだって、少なくともわれわれという偽映鏡のガラス質が、いままでとは違った竈の中で異なった偽映鏡に造り替えられたのだったともいえるんだ。